50th SPECIAL INTERVIEW
HI-TEC PEOPLE #009 <前編>
みうらじゅん
1974年にイギリスで誕生し、世界初の軽量アウトドアブーツの開発をはじめ、多くのスポーツで歴史を彩る数々の名作シューズを生み出してきた、アウトドア・ライフスタイルブランド<HI-TEC> のウェブコンテンツ<HI-TEC PEOPLE(ハイテック・ピープル)> は、チャレンジをしながら自分らしい人生やライフスタイルを謳歌するさまざまな人物たちにフォーカスしていくシリーズ。
今回はHI-TECのブランド50周年を記念したスペシャルコンテンツとして、漫画家やイラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広く活躍し、新語・流行語大賞の「マイブーム」や「ゆるキャラ」をはじめ、数多くの流行やカルチャーを生み出しながら、長年にわたってさまざまな活動を続ける「みうらじゅん」 さんが登場。
普段あまり語られることのないみうらじゅんさんのシューズやファッション事情をはじめ、ロックから影響を受けたみうらさんの半生や考え方、人生やライフスタイルのエンタメ化のヒントが散りばめられたインタビューを、前編と後編に分けてお届けします。
さらに今回はみうらじゅんさんが生み出してきた数ある「マイブーム」の中の1つの「Sinceブーム」とHI-TECとでコラボレーションし、数量限定の<HI-TEC x MJ コラボレーション Tシャツ・スウェット> を特別制作。みうらじゅんさんが前面にプリントされたスペシャルなTシャツとスウェットを、アンケートページより応募いただいた方から抽選で「合計50名様」 にプレゼントします。
他では絶対手に入らないコレクタブルなアイテムが当たる、まさにブランド50周年にふさわしいスペシャル企画。皆様のご応募お待ちしております。
※<HI-TEC x MJ スペシャルコラボレーション Tシャツ・スウェット>は、インタビュー後編ページに掲載しています。
散歩するってなるとやっぱりシューズの性能とか、自分の足に合っているか合ってないかがすごい重要。
- 今回の<HI-TEC PEOPLE>は、「マイブーム」や「ゆるキャラ」の流行語を生み出しながら、長年にわたり数々の独自のマイブームや活動を紹介してきた、日本のサブカルチャーを牽引し続けるイラストレーターのみうらじゅんさんにご登場いただき、ブランド50周年にふさわしいスペシャルなインタビュー企画となっています。
HI-TECはイギリスで創業したアウトドア・ライフスタイルブランドで、今年の2024年にブランド誕生から50周年を迎えましたが、ブランド創業年の1974年当時、みうらさんはおいくつぐらいですか?
みうらじゅん:中学生のころだから、僕のほうがHI-TECよりだいぶ歳上ですね(笑)
- そうですね(笑)もともとはスカッシュというスポーツの専用シューズを開発したことが、ブランドのスタートになります。スカッシュについてはご存じでしょうか?
みうらじゅん:実はスカッシュっていう競技のことはまったく知らないんですよ。友人に聞いた「何となく屋内でやるテニスっぽいスポーツなんじゃないの?」しか情報がないんです。
- ちなみにスカッシュはHI-TECと同じくイギリスが発祥で、約300年近く前からある結構歴史のあるスポーツになります。日本でも1970年代あたりから徐々に盛んになっていったようです。
みうらじゅん:ラケットで壁打ちするようなスポーツですよね?
- ボールを壁に角度つけて打ち合ったりするので、感覚的にはビリヤードにも近いような球技ですね。日本では今ではあまり身近ではなさそうな競技ですが、世界的にはオリンピックの競技に採用されるぐらい、競技人口がそこそこ多いスポーツになります。2012年に開催したロンドンオリンピック以降は競技として採用されていませんでしたが、次の2028年のロサンゼルスオリンピックでは復活するそうです。
今日みうらさんに履いていただいているシューズが、ブランド50周年を記念して、当時のアーカイブモデルをモダナイズし復刻した「SQUASH ORIGINAL(スカッシュ・オリジナル)」というモデルになります。実際履いてみていかがですか?
みうらじゅん:自分の足幅にも合ってるし軽いし楽ですね。僕は足の横幅が大きい血筋で生まれてきているもので(笑)まずは横幅が広いかどうかが一番気にしているところです。だから靴屋さんではいつも横幅の広いものを出してもらって買っています。
- HI-TECはスカッシュシューズをリリースした以降も、さまざまなスポーツのシューズを開発したり、世界初の軽量のハイキングブーツでアウトドアシーンに進出したり、世界に広く展開するグローバルブランドとして成長してきましたが、HI-TECのシューズは初めて知りましたか?
みうらじゅん:シューズに全くこだわりがなくてすみませんねえ(笑)HI-TECのことも知りませんでした。ちなみにコロナが流行ってからすごく散歩するようになったんですけど、散歩するってなるとやっぱりシューズの性能とか、自分の足に合っているか合ってないかがすごい重要だなって思いましたね。足に合わないスニーカーだと散歩の距離が稼げないんですよね。でもこのスニーカーだったら大丈夫そうです。
そういえば、昭和の東京オリンピックでは、マラソンのアベベという選手は裸足で走っていたもんです(笑)
- たしかにアベベは裸足で走っていましたね(笑)ちなみにスニーカーは普段から履くことが多いですかね?
みうらじゅん:今は基本的にスニーカーしか履いてないです。美大時代は、ロックテイストな白いヒール靴を履いていましたけどね(笑)それにスニーカーには必ず防水加工してもらっています。頻繁に散歩するようになってからは、そんなに都合よく天気が良い時ばっかりじゃないですからね。
- このSQUASH ORIGINALには防水機能はないのですが、HI-TECのアウトドアコレクションには透湿防水機能を搭載したモデルも多く展開しています。
みうらじゅん:それはいいですね。僕は最近はもうお葬式でも黒いスニーカーを履いていってますから。還暦を過ぎたあたりから、お葬式は革靴じゃなくてもいいんじゃないかって思って。僕のキャラからして「あの人だからしょうがないよ」って言われ、呆れられるように頑張ってきましたから(笑)
- (笑)
みうらじゅん:でも実は前からスポーツに特化したものとかはできる限り避けてきたんです。小・中・高と体育の授業で履かされていたシューズも苦手でしたし、スポーツウェアは当然嫌いでね。みんなと同じものを与えられるというのも嫌だったんでしょう。大人になって自分の好みで買えるようになって嬉しかったです。それにスニーカーもスポーツ以外の目的で履く人もすごく増えてきていた頃だったから、僕でも買いやすくなっていったんだと思います。
- ヒップホップやバスケットボールの影響で、世界的なスニーカーブームが起こった80年代の頃から、普段でもスニーカーを履くっていうカルチャーが一気に広まっていきましたね。
みうらじゅん:ヒップホップじゃなく、僕の時代はその前のフォークです。好きなフォークシンガーがスニーカーを履いていましたから。スニーカーか下駄、そんな時代です(笑)
- 下駄ですか(笑)70年代ごろでしょうかね?
みうらじゅん:ですね。TVドラマ「俺たちの旅」の中村雅俊さんが履いていた影響だと思いますが(笑)でもそのうちスポーティーの中に「楽ちん」っていう意味も出てきて、自由に履けるようになったんでしょうね。
でも当時はスポーツやってないのにバスケのシューズ履いているのは違和感がありました。それをヒップホップの人たちが覆したんでしょう。今ではそうじゃないといけないみたいなルールが無くなったので良かったですね。
- 今ではファッションもジャンルだったり大きなトレンドみたいなものはほぼなくなってきていますし、みんなが好きなものを自由に着たり履ける世の中になりましたね。
みうらじゅん:型にはまったことっていうのが時代遅れですからね。「みんなちがって、みんないい」それが一番ですよ(笑)
やっぱり「アウト老」にはスニーカーが一番。
- 今日みうらさんに履いていただいているSQUASH ORIGINALのカラーはホワイトの1色のみの展開ですが‘、シューズの色の好みとかはありますか?
みうらじゅん:若い頃はかなりロックテイストの派手な服を着ていたので、シューズの色もそれに合わせていました。ファッションも好きなものを全部合体すりゃいいと思ってましたね。
特に日本がバブルだった頃、「この服にはこの靴」とかいうファッションルールが決められてましたから。それに反逆する気持ちもありました。その頃に赤とか紫色とかのヒールシューズをよく買ってました。
- 昔は特にそういうファッションのルールみたいなものがしっかりとありましたね。ヒールシューズは具体的にどんなものでしたか?
みうらじゅん:美大の頃はロンドンブーツを履いていたから、僕が初めてドクターマーチンを買ったのもその頃。でも今はもう重くて履けないでしょう。たぶん足が折れると思います。それに僕のドクターマーチンって飛行機に乗る持ち物検査のとき必ずブザーが鳴るんです(笑)
- つま先に鉄板が入っているモデルもありますよね。
みうらじゅん:それです。喧嘩になったらとりあえずそのブーツで相手のスネを蹴れば勝てるって先輩から教わりました(笑)でも今はそういうこと、どうでもいいじゃないですか。「老いるショック」を受けた者としては、やはり機能性を重視するっていうのが正しい在り方なんじゃないかなって思って、シューズの色もあまりこだわらず履いています。やっぱり「老いるショッカー」にはスニーカーが妥当でしょう。歳をとっていくと自分にしっくりくるものを見つけたり、身体に合ったものを身につけるっていうことが大事だなって思います。
- ブーツもそうですけど、若い時に着ていた革ジャンとか分厚いウールコートなんかも、歳をとると重すぎて着るのがしんどくなってきますね。
みうらじゅん:だから今の流行っていうのは若い人向けで、昔の若者には通用しないってことです。
根底にロックがなきゃ。それがあるのとないのとでは大違いですからね。
- 今日はSQUASH ORIGINALに合わせてスタイリングもしていただいていますが、みうらさんの最近のファッションは今日のようなモノトーンのカラーが多いですか?
みうらじゅん:HI-TECのスニーカーが白だからっていうのもあるけど、シックなモノトーンの服装ならいいかと思って。それに「老いるショッカー」ともなると、もう顔や雰囲気が濃くなってきちゃって、ハデなファッションだとバッティングするんですよね。
- (笑)でもみうらさんは以前からファッショナブルな印象はあります。
みうらじゅん:そうですか?たぶん、それは根底にロックがあるからだと思います。ロックがあるのとないのとでは大違いですから。僕が影響を受けた60年代半ばから70年代初頭までのロックは「ロック=反逆」のイメージがあったので、普通のことがやたら苦手なんです。
- 今ではロックは一般に広く浸透していますし、当時のような反逆的なものではなくなってきてしまっていますよね。
みうらじゅん:ロックの意味も変わっていきますからね。かと言って僕は若い頃、特に濃い人間ではなかったもんで、ファッションをロック寄りにしてやってきたんです。でも意外だったのは、この歳になると自然と濃くなっちゃうんですよね(笑)
- たしかに歳をとるとなぜかだんだん顔が濃くなってきますよね(笑)
みうらじゅん:それにも反発がありましてね、まだ。今はさらに老けて見えるように「老けづくり」を始めたんです(笑)「ザ・バンド」っていうバンドのメンバーがたぶん意識的にやっていたことですけどね。
- ボブ・ディランのバックバンドもやっていたバンドですね。
みうらじゅん:そうです。その頃のザ・バンドのメンバーはみんな20代そこそこでしたけど、ものすごい見た目が老けてるんです。当時はグラムロックが大流行だったのにも構わず。だからその反発だと僕は思いました。ヒゲも伸ばしっぱなしでね。でもそこがとてもかっこよくてねえ。
- 当時のサザンロック系とかのバンドはみんな歳は若いのに、見た目はお爺さんなんじゃないかっていうぐらいの渋さがありました。
みうらじゅん:サザンロックの人たちは特にそうでしたね。憧れがありました。だから自分のような薄い人間があの人たちみたいになるためには、やっぱりさらに老けるのがいいかと。
- そう聞くと、たしかに今のみうらさんの見た目はかなりサザンロックな雰囲気を醸し出してますね。
みうらじゅん:この歳でようやく得た濃さですからね(笑)
- ちなみに今はシンプルなファッションされていますけど、もしかしたら数年後には派手な格好になってるかもしれないですよね。
みうらじゅん:歳をとることは退化ではなくむしろ進化だと思ってますから、今後どうなることやら自分でも予想がつきません(笑)
歳をとって顔が濃くなってくると、だんだん顔の濃さと服の濃さとバッティングする。
- 引き続き、みうらさんのファッションについて色々おうかがいできればと思うんですが、みうらじゅんといえば、やっぱりサングラスとハットがトレードマークですけど、何かきっかけはあったんでしょうか?
みうらじゅん:サングラスはボブ・ディランがかけておられたのがきっかけですね。でももう、この歳になるとトークショーとかでステージに立つときに、サングラスをかけてると楽屋からステージまでが暗くてね、係の人に手を添えてもらって出ていることがあるくらいすごい不自由なことになってるんですけどね(笑)でも「ロックとは不自然と見つけたり」なのでそこはしょうがないですよね。
- ちなみにサングラスは何本もお持ちなんですか?
みうらじゅん:僕のサングラスは度付きなので、度が進行するたびにフレームを変えていましたから、かなり持っていると思います。
- 今日かけられているサングラスも、ちょっと細めのウェリントンのような感じでカッコいいですよね。
みうらじゅん:ありがとうございます。最近買ったものです、コレ。
- またハットでいうと、帽子ブランドのCA4LA(カシラ)のサイトにインタビューで出演されているのを見かけました。
みうらじゅん:CA4LAは何個か持っていますし、以前にコラボレーションしたこともあるんですよ。「俺になる帽子」っていうハットから髪の毛が出ている帽子をね(笑)
- ちなみに普段洋服などはどちらで買われることが多いですか?
みうらじゅん:僕はあまり洋服を探しに行くっていうセンスがないんですよ。とりあえず必要になったら買いに行くだけなので、伊勢丹メンズ館が多いですね。
- そういえば以前はポール・スミスがお好きだったとのことですが。
みうらじゅん:今もたまに買いますが、一度「みうらじゅん賞」ってのをポール・スミスさんにも差し上げたこともあるくらいです(笑)
- ちなみにポール・スミスの柄シャツを着ていた頃だと思うんですけど、みうらさんとハードロックやヘビーメタルの音楽評論家の伊藤政則さんの雰囲気がよく似ているって話もありましたね(笑)
みうらじゅん:そうそう、よく政則さんは間違えられたね。その上政則さんも買い物は伊勢丹メンズでされているらしいですから(笑)
はじめから好きなファッションがあったわけじゃなくて、憧れの人が着ているような服を着たいっていうことだった。
- みうらさんはボブ・ディラン以外に、吉田拓郎さんにも影響されていたとお聞きしたことがありますが、みうらさんが髪の毛を長髪にするきっかけは当時の吉田拓郎さんの影響でしょうか?
みうらじゅん:当然吉田拓郎さんの影響です。美大時代はそれが大ロン毛になりましたけどね。でも僕がデビューした80年代初頭は大ロン毛はもう、ラスト・サムライ扱いでね。ポパイとかホットドックプレスとかのファッション誌でイラストの仕事もありましたから、その時はテクノカットもどきみたいな髪型もやってました。
ファッション誌の仕事では、よくオシャレな人のイラストとかを描かされてたんですけど、今でこそネットで調べられるけど、当時はネットはないので全然わからなくて。しょうがないからNIKEのスニーカーだったら「ナイキ」ってカタカナでわざわざ描いたりしてごまかしてました(笑)
- (笑)
みうらじゅん:ある時飲み屋で担当編集者に「みうらくんってオシャレなブランド全く知らないんじゃないの?」って聞かれ、もうハッキリと「知りませんよ!」って白状したんです。その翌日からまた元通り髪の毛伸ばして、サングラスかけて、バンドまで始めました。
- バンドをやってだんだんと世間に露出していくにつれて、ファッションにも興味が湧いていった感じでしょうか?
みうらじゅん:ロック的なファッションを強化したのは確かです。
- 今ではファッション誌もたくさんありますし、ネットやSNSでもファッションの参考をすぐ見つけることができる世の中になっていますが、昔は特にみうらさんがボブ・ディランや吉田拓郎さんを憧れるように、自分が憧れるロックスターやアイドルの格好を真似するところからファッションの道に入っていった気がします。
みうらじゅん:もちろん、それしか方法はなかったですからね。
※<HI-TEC x MJ スペシャルコラボレーション Tシャツ・スウェット>は、インタビュー後編ページに掲載しています。
みうらじゅん
イラストレーターなど
1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、イラストレーター、 エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。1997年、造語「マイブーム」が新語・ 流行語大賞受賞語に。「ゆるキャラ」の命名者でもある。2005年、日本映画批評家大賞功 労賞受賞。2018年、仏教伝道文化賞沼田奨 励賞受賞。著書に『アイデン&ティティ』、『マイ仏教』、『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著)、『「ない仕事」の作り方』(2021 年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選出)、『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』など。音楽、映像作品も多数。
みうらじゅんOFFICIAL SITE:http://miurajun.net/
Youtube :https://www.youtube.com/@mjj445/videos
Twitter:@miurajun_net
SQUASH ORIGINAL
半世紀におよぶ歴史の中で生み出されたアイコンモデルにスポットを当て、セルフリプロダクトしていくシリーズ「Original Since」コレクションより、ブランド設立と同年に開発した、革新的かつ軽量で履いてすぐに心地良さを実感できるスカッシュシューズをモダナイズし復刻。ブランドのルーツであるスカッシュシューズの快適性は継承しつつ、すっきりとしたシルエットとなっています。
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※<HI-TEC x MJ スペシャルコラボレーション Tシャツ・スウェット>は、インタビュー後編ページに掲載しています。