JOURNAL
HI-TEC PEOPLE #004 <前編>
ジェリー鵜飼 | アートディレクター・イラストレーター
1974年にイギリスで誕生し、世界初の軽量アウトドアブーツの開発や、ランニングやスカッシュ、テニス、サッカーをはじめ、多くのスポーツで歴史を彩る数々の名作シューズを生み出してきた、ライフスタイル・アウトドアブランド<HI-TEC>
HI-TECのウェブコンテンツ<HI-TEC PEOPLE(ハイテック・ピープル)>は、ブランドの長い歴史の中で、テクノロジーを駆使しながら数々の名作シューズを作り、時代を彩ってきた背景になぞらえ、チャレンジを続け時代を躍進するさまざまな人物たちにフォーカスしていくシリーズ。
第4回は、登山やアウトドアをライフワークとしながら、アートディレクター、イラストレーターとして幅広く活動する「ジェリー鵜飼」さんが登場。アーティストとしての活動や、「ULTRA LIGHT(UL)」に傾倒していった経緯から、「ULTRA HEAVY」の活動、東京と八ヶ岳の2拠点生活となった背景などのインタビューを前編と後編に分けて公開します。
また今回のインタビューと合わせて、HI-TECとジェリー鵜飼さんとのコラボレーションアイテムを特別制作。インタビュー後編に掲載のアンケートページより応募いただいた方から抽選で、「HI-TEC x JERRY UKAI コラボレーションバンダナ」を30名様にプレゼントします。
※「HI-TEC x JERRY UKAI コラボレーションバンダナ」の詳しい応募方法、アンケートページは12月中旬のインタビュー後編に掲載予定です。
昔からちょっとへそ曲がりなところもあって。だから当時は周りの人や世間があまり履いていないHI-TECをチョイスしていたのかも。
- 1974年にイギリスで誕生した「HI-TEC」は、トレッキングをはじめ、さまざまなスポーツ分野で名作シューズを開発してきたアウトドアライフスタイルブランドですが、登山や自然の中での遊びをライフワークとされている鵜飼さんは、以前からHI-TECをご存知でしたか?
鵜飼:はい、だいぶ前から知っていましたよ。たぶん20年ぐらい前とかかな?
- 鵜飼さんが今ちょうど50歳ということなので、20代〜30代あたりの頃でしょうか。その当時はすでに登山などのアウトドアの趣味はありましたか?
鵜飼:当時は今みたいに思いっきりのめり込んではいませんでしたね。自然は好きだったのでハイキングとかはするけど服装やギアにはこだわっていなかった。テントとかバックパックとか靴とかは特に気にせず、とりあえず家にあるものを使っていましたね。
- HI-TECのシューズを実際に履かれていた時期も?
鵜飼:HI-TECのハイキングシューズを持っていましたよ。モデル名はちょっと忘れてしまったけど・・・
- 当時だと「SIERRA(シエラ)」というブランドの名作モデルがありました。90年代くらいまでは国内でも販売されていたハイキングシューズに「軽量」という概念を取り入れたパイオニア的なモデルなのですが、もしかしたらそのシューズかもしれませんね。ちなみにHI-TECにはどのような印象をお持ちですか?
鵜飼:やっぱりアウトドアのイメージが強いですね。当時持っていたシューズはカラーリングも可愛かったので気に入っていました。
- 確かにHI-TEC に限らず、80〜90年代のシューズはカラーリングや色の組み合わせが斬新なものが多かったですね。アウトドアシューズも今では落ち着いたカラーを数多く見かけますが、ジャンルとしてはもともとは派手なカラーリングが本流ですよね。
鵜飼:そうですね。僕は昔からちょっとへそ曲がりなところがあって、人気ブランドのシューズはあまり好きではなかったんです。だから当時は周りの人や世間があまり履いていないブランドということで、HI-TECを履いていたのかも(笑)
洋服や道具を選ぶときの自分の基準は、昔から好きだったアメリカやイギリスのカルチャー。
- HI-TECではクラシックなライフスタイルモデルを展開していたり、FBIや各国の軍で採用されるトレーニングシューズ“MAGNUM(マグナム)”などを展開していますが、今回はブランドのアウトドアモデルにフォーカスしていきたいと思います。今履いていただいているのは2016年からスタートしたHI-TECのアウトドアコレクション“ADAPTER(アダプター)”の21年秋冬シーズンの新作「OCOTA SLIDE(オコタスライド)」になりますが、まずモデルの印象はいかがですか?
鵜飼:モックタイプのシューズは結構好きですね。色はベージュでも少しだけピンクっぽい感じもありますね。
- 少し赤みのあるベージュカラーを採用していて、あまり見かけない色味かもしれません。
鵜飼:このカラーすごくいいですね。こういう系の色好きなんですよ。
- 実際履き心地はいかがでしょう?
鵜飼:程よく軽くて履き心地もだいぶいい感じです。ソールに厚みがあるし履いていて疲れにくい感じもしますね。
- そうですね、クッション性の高いフットベッドを採用したアウトソールになっています。今日は鵜飼さんの八ヶ岳のアトリエにお邪魔して、今は外のベランダでお話ししていますが、自宅でリラックスしたり、家の周りをちょっと散歩したりみたいなシチュエーションで気軽にさっと履いていただけるモデルかと思います。
鵜飼:実はもう結構このシューズ履いていて。昨日もこれ履いて都内のギャラリー巡りしていました。
- 気に入って履いていただけてよかったです。かかとのバンドが取り外しできるような仕様になっていて、バンドを外せばつっかけサンダルのようにもなりますし、かかとをホールドすれば普段履きもできるようになっています。
鵜飼:僕は結構ズボラなところあるので、かかとのベルトを外しちゃって、つっかけにするのも良さそう。内側も柔らかい生地が貼ってあるから、靴下でも裸足でも季節やファッションに合わせて履けそうですね。
- インナーは吸湿速乾の生地を採用していて、表はフェイクスエードなので、季節問わず活躍するモックシューズになっているかと思います。
鵜飼:泊まりのキャンプだと頻繁にテントに出入りするので、このシューズはそういうシーンでもかなり便利そうです。
- あとカラーはブラックがあって今シーズンは2色展開になるのですが、鵜飼さんはどちらの色がお好みですか?
鵜飼:でもやっぱりこのベージュがいいですね。いいですよこの色。
- 今回アースカラーでも少し中間色っぽい特徴的なベージュを採用してみましたが、鵜飼さんにそうおしゃっていただけたのでこの色は正解でしたね。
鵜飼:日本にはあまりない雰囲気のベージュですよね。欧米のインポートっぽい感じというか。サンフランシスコに僕がすごく好きな街があって、そこには「General Store(ジェネラルストア)」とか「Trouble Coffee(トラブルコーヒー)」とか「Mollusk Surf Shop(モラスクサーフショップ)」とか、大好きなお店がいくつかあってよく行くんだけど、なんだかその街をイメージさせるような色。海のすぐ近くで電車の終着点なんだけど、街並みの雰囲気はちょっとだけさびしい感じかな(笑)
- ぜひいつかその街やショップに訪れてみたいですね。ちなみに鵜飼さんが登山にはまるきっかけは、やはりアメリカのアウトドアカルチャーからの影響でしょうか?
鵜飼:山を好きになったのは日本でなんだけど、洋服や道具を選ぶときの自分の基準は、昔から好きだったアメリカやイギリスのカルチャーが元になっていますね。
- やっぱり鵜飼さんの世代は、若い頃からファッションや色々な部分で欧米の文化に憧れて、取り入れられてきているので、自分の中にいつまでもアメリカやイギリスの古き良きイメージが根強くありますよね。
HI-TECというアウトドアライフスタイルブランドを意識して、みんなで山や緑など自然の中を楽しむような、ピースフルなイメージで絵柄を描こうと思っています。
- HI-TECのインタビューコンテンツ「HI-TEC PEOPLE」では、インタビューにご登場いただいた方々と一緒にコラボレーションアイテムも制作しているのですが、今回はアーティスト、イラストレーターとして活動されている鵜飼さんにオリジナルイラストを制作いただいて、それを落とし込んだ「コラボレーションバンダナ」を作る予定です。今回のイラストのデザインイメージや着想の背景はどんな感じでしょうか?
鵜飼:そうですね、今回はHI-TECというアウトドアライフスタイルブランドを意識して、みんなで山や緑など自然の中を楽しむようなピースフルなイメージで絵柄を描こうと思っています。
- HI-TECのブランドイメージにピッタリのイメージですね。ちなみにバンダナは、昨今のコロナ禍で手洗いという習慣がより大切になったので、以前よりも携帯する方が増えたアイテムの1つですよね。
鵜飼:僕はバンダナをいつもポケットに入れておく派なんだけど、なんならフランス人みたいに鼻かむ時もバンダナやハンカチで鼻かんじゃうの(笑)で、折り畳んでまた違う場所で鼻をかむみたいな。
- かっこいいですね(笑)じゃあ鵜飼さんにとって以前からかなり馴染みのあって欠かせないアイテムですね。
鵜飼:ポケットティッシュってなぜかいつもポケットに入ってないんだよね(笑)だから鼻かみたい時はいつもバンダナを使っちゃいます。
- そういう用途も含めて、バンダナは一枚持っているといろいろな場面で使えますよね。あとは額の中に入れたりするとアートや作品っぽく飾れたりもしますし。アーティストの鵜飼さんとのコラボレーションバンダナはまさに作品のようなものになりそうで出来上がりが楽しみですね。
特にインターネット上ではみんながギスギスしていて、この雰囲気ちょっと嫌だなって思ってね。
- 鵜飼さんはアートディレクター、イラストレーターとして以前から幅広く活動されていますが、最近のトピックスなどはありますでしょうか?
鵜飼:9月末から10月末まで「Smile Village」という展示を代官山の蔦屋書店で開催しました。最近の世の中、特にインターネット上ではみんながギスギスしていて、この雰囲気ちょっと嫌だなって思ってね。だから今回はSmile Villageと題して、和やかな「自分の村」をイメージした展示を行いました。
- 先日展示にお邪魔させていただきましたが、今回は山や自然のイラストがメインで、グラデーションやカラフルな色使いがとてもよかったです。反響はいかがでしたか?
鵜飼:そうですね、今回は山を題材とした作品を中心に展示を行いました。いつもは「ジェリー・マルケス」っていうネズミのオリジナルキャラクターの作品が多いんだけど、今回はわざとそのキャラは入れなかったの。だから今回は僕のネズミのファンの人たちからの反響は少なかったかな(笑)
- ちなみに今回は一点モノの作品を販売されていたんですか?
鵜飼:今回はオーダーを受付していたので、これから印刷や自分でスプレーして作品を制作していく予定です。あとは表参道のvisvimでも8月に展示を行いましたね。
- その時展示されていた作品はどんなものだったのでしょうか?販売もされていましたか?
鵜飼:その時も山のイラストをステンシルで描いた作品と、あと3枚ぐらいオリジナルの水彩画も展示して、おかげさまで全部売れました。あとはマウンテンリサーチが監修しているキャンプ場があって、今度そこでイベントがあるんですけど、そのメインビジュアルも担当しています。マウンテンリサーチとはお付き合いはそこまで古いわけではないけど、お互い共感し合える部分があるので、Tシャツのグラフィックとかいろいろ取り組ませてもらっていますね。
- 鵜飼さんとアウトドアブランドのコラボレーションは毎シーズンよくお見かけします。
鵜飼:そうですね、コロンビアはずっとお付き合いさせていただいていて、今また次の新しいアイテムを取り組んでいる最中です。あと、ノースフェイスで新しいTシャツがちょうど10月に発売されるところなんですけど、そのアイテムのオリジナルイラストも提供しています。
高校生のときに自分でZINEとか作っていて、クラスの仲の良い友達に配ったりしていましたね。その頃からものづくりするのが好きでした。
- 鵜飼さんはアーティスト活動以外にも、アウトドアジャンルでも色々と活動されていますが、それぞれそのような活動をするようになったきっかけや、今までの経緯などをうかがいたいと思います。もともとは美大を卒業されたということですが、美術やアートは若い頃から興味があったのですか?
鵜飼:中学生か高校生ぐらいから、すでにそういう道でやっていきたいなと思っていましたね。
- 昔から絵を書くのが好きだったのでしょうか?
鵜飼:高校生のときに自分でZINEとか作っていて、クラスの仲の良い友達に配ったりしていましたね。その頃からものづくりするのが好きでした。
- ご家族がアーティストだったとか、漫画やアニメがお好きだったとか?
鵜飼:全然、普通のサラリーマン家庭でした。親は漫画が家の中に置いてあるのはあまり好きじゃなかったみたいで、そんなに買ってもらえませんでしたね。だから余計自分で作りたかったのかもしれない。
- だから自分でイラストを描いたり、オリジナルのキャラクターを創作するようになったのかもしれませんね。もともとご出身は静岡県でしたよね?
鵜飼:そうですね。山も近いし海も近いし、割と自然が身近にある環境で育ちました。
- 自然が近いところで過ごされたのが、鵜飼さんの今の活動の1つの原点になっているかもしれませんね。そこから美大に入られて、本格的に美術やアートを学んでいったという感じでしょうか?
鵜飼:いや、学生の時は遊んでばっかりでしたね(笑)バンドをやったり。でもその頃に友達に誘われて山に登るようになって。
- そうなんですね(笑)そこから登山にだんだんはまっていったとか?
鵜飼:登山っていうほどでもないんだけど、その時はパワースポット巡りみたいな感じで山に行っていましたね。そういうのがちょっと流行っていた時期で。あと、ちょうどその頃、イギリスや世界で山の中でハウスとかテクノなんかの音楽ジャンルのライブをやるっていうムーブメントがあって。
- いわゆるレイヴですかね。
鵜飼:そのハシリだよね。その頃日本にはそういった野外の音楽ライブはまだほぼなかったんだけど、そういうのをやり始めた人たちと仲が良くなって、その人たちにイベントによく連れてってもらって。
- 時期的にも今の野外フェスの原型がかたち作られた頃でしょうか。
鵜飼:そうだね、たぶん1992〜93年頃かな。携帯電話もインターネットもまだなかった頃。でも、そのイベントにいる先輩たちはイギリスの有名なミュージシャン、アーティストとかなり繋がりがあって、はたから見ていてすごいなあと思ってました。
- おもしろい時期に貴重な経験されていますね。美大を卒業してからも、しばらくはそういった山の中の音楽イベントに参加されていたのですか?
鵜飼:そう、遊びながら知り合いとかからイベントのフライヤーを頼まれるようになって。大学卒業して割とすぐに借金してマッキントッシュを買ったの。マックとモニターとスキャナーとプリンターとか色々揃えて、全部で150万ぐらいだったかなと思うんだけど。まだフロッピーディスクの時代だし、周りがまだマックやパソコンを持っていなかった頃。
- 当時そこまで揃えるとなるとなかなかの金額ですよね。
鵜飼:やれることもあんまりないんだけど、とりあえずイラストレータとフォトショップは入れて、マックができる友達に教わったり、本買ったり、独学で使い方を覚えていって。ちょうどそういうレイヴみたいなイベントで遊んでいたから、とりあえず「マック使えるよ」って周りに言うとみんなからフライヤー作ってとか頼まれて。当時、ボアダムズの山塚アイ(EYƎ)さんと高木完さんと小泉さんって方が「スカイタッチ」っていうイベントをやっていて、そのフライヤーが僕の一番最初の仕事。そういうところで遊んでいてラッキーでしたね(笑)
- 最初のお仕事がなかなか華々しいですね。そこからはイベントや音楽関係のフライヤーとかCDジャケットのイラストなどを手がけるようになっていった感じでしょうか?
鵜飼:そうですね、「サブライムレコーズ」っていうケン・イシイさんとかが所属しているテクノ中心の音楽レーベルがあって、そこのスタッフと仲良くなって。「鵜飼くん面白いね」「CDジャケットのイラストやってよ」みたいな。そういう流れでここまでずっとやってきたので、自分で特に営業もせず、会社とかにもせず、その時やれることだけやって、お金がないときはお金のないなりの暮らしをしていましたね。
- たしかに会社を設立してそれを運営していくとなると、アーティストとしてはあまり自由でなくなってしまう部分もあるかもしれませんね。
インタビュー後編へ続く(12月中旬公開予定)
ジェリー鵜飼
アートディレクター・イラストレーター
1971年生まれ。アートディレクター、イラストレーターとして活動。数々のアーティストのCDジャケットや、ファッションブランド、アウトドアブランドとのコラボレーション、広告、カタログなどを手掛る。登山やアウトドアをライフワークとしながら、個展の開催や執筆活動を積極的に行い、スタイリスト石川顕、アーティスト神山隆二とともに「ULTRA HEAVY」としても活動。
Instagram:
@jerry_ukai
アッパーにフェイクスエードを使用したモックシューズ。
着脱できるベルトにより、アウトドアシーンからデイリーユースまでスタイルに合わせた履きこなしが可能。吸湿速乾インナーを採用しておりシーズン問わず活躍します(12月発売予定)
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※「HI-TEC x JERRY UKAI コラボレーションバンダナ」の詳しい応募方法、アンケートページは12月中旬のインタビュー後編に掲載予定です。